小学校での習字の時間を思い出す。
先生が「墨をたっぷりとつけましょう」と言うものであるから、その言葉通りたっぷりと筆の毛全体に墨を黒々と吸わせた。「力強く書きましょう」とも言うものであるから真っ白な半紙に筆を押し付けて線を可能な限り太く引いた。べっちょりと墨の運河をつくりそれでも破けない半紙の丈夫さに感心しながらも、なぜお手本のようにはならないのかは考えなかった。
書写の時間では、文章の書き写しが行われた。所定の文を原稿用紙にひたすら書き写すのである。
当時私はその訓練を素早く文字を書き写す技能向上の為の訓練と心得ていたので、兎にも角にもそのつまらない作業を終わらせたい一心で、クラス最速を目指して速度のことのみ考えて書き写していた。
結果、私の字は殴り書きのようになり、書写教育は失敗した。
原稿用紙などは枠があるので良い。しかし例えば色紙などなんの基準点のない真っ白なところへ何かを書こうものなら、悲惨な状況になる。
黒板に文字を書かせれば、斜めに下がってゆくか、もしくは上がってゆく。手紙の宛名書きでの縦書きも右か左にずれてゆく。それが為に大学への願書は三枚ほど封筒を台無しにしたところであきらめ、定規を使った。
この現状に鑑み、今まで文字を美しく書くということに目を向けていなかったのを改め、丁寧に美しい文字を書くことを心がけようと思う。
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